わくら屋

和倉稜の掌編・短編小説

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ハロー・ミステリー(BFC3応募作品)

落ちていた遼のボクサーパンツ、ライトグリーンのクッション、タオルケット、目についた柔らかいものを片っ端から投げつける。受け止めた遼は両手を一杯にする。 「まあまあ七瀬さん、ちょっと落ち着きな」 落ち着いてられるか。私が初めて主催するミステリ…

プロピオニバクテリウム・アクネス(イグBFC2 参加作品)

アクネ菌が話しかけてきた。 卒論に向けた追い込み実験を終え、帰宅した寒い深夜のことだ。ボロアパートの壁は薄く、隣人は何ら特徴のない男だった。その男の部屋から艶かしい女の声が響いてきた。自分と身なりの変わらない隣人に恋人がいるなんて勘弁して欲…